2020年2月11日火曜日

4390 ips 3Q決算の考察

1 はじめに
 長期銘柄のipsで、3Q決算が2月7日に発表された。
 いつもと違い、12時からの発表。同日行われていた個人投資家説明会の影響もあったと思われる。

 後場直後、12時半から大きく跳ね上がり、また大きく乱高下しながら、2月10日の引け値は1284円。
 去年の3Qは発表後に急落だったので、今年は素直に嬉しい。
 

 今期は2Qまでは経常利益と純利益が減益だったのが、今回の3Qで経常利益、純利益ともに一気に前期を抜き去り、まだ投資段階ではありながらも、売上、営業利益、経常利益、純利益の全てにおいて2桁成長しているということが印象付けられたと思う。

 さて、ここからまた各部門に分けて検討してみたい。

2 海外通信事業
⑴ 海外通信事業は、短期リースの単価の下落で売上自体は下がっている。
 ただし、短期リース契約の単価は下落しているが、他方で単価の下落に応じて仕入れ値も下がるので、利益率が上がることになる。
 今回、4割近くが利益となっており、結果として営利は前期と同額になっている。

⑵ 売上の期ずれ
 去年の10月にLRT2で火災が起こった。
 この分で大手通信事業者に本来は売上計上できるはずの分が遅れており、結局3Qの売上計上には間に合わなかったようである。
 自然災害による遅れはしょうがない。売上をキャンセルされるようなことは無いようなので、ゆっくり売上計上されるのを待ちたい。

⑶ MRT3の売上は、3Qの海外通信につかないの?
 12月に光ファイバー回線の敷設工事が完成した。
 3Qの海外通信事業で売上つかないの?と思う方もいるかと思うが、今回、海外通信事業はMRT3号線には関わっていないことから、フィリピン国内通信事業に全て売上が上がる予定である。
 そして、フィリピン国内通信事業は3カ月遅れでの計上になるので、今後は、フィリピン国内通信事業の売上に、MRT3の売上が期間按分で乗ってくる予定である。
 時期は、新年あいさつだと12月の終わりごろに引き渡したかもしれないので、連結で本格的に計上できるのは来期であるが、4Qにも多少はつくかなという感じである。
 
⑷ ミンダナオは?
 

 12月末で700キロメートル超まできた。
 まだまだ敷設中なので、これものんびり待とう。

 というわけで、今回海外通信事業は、火事などのハプニングがあった上でのこの数字は素晴らしい。
 
3 フィリピン国内通信事業

 前期比でみて、売上がすさまじい勢いで成長し続けている。
 契約ビル数も順調に増えている。が、フィリピン国内通信事業も実はいくつかハプニングがあってのこの数字である。

⑴ 未払い法人に対する解約
 今回、フィリピン国内通信事業では、法人向けインターネットサービスで代金を支払っていない未払法人について、一気に解約を行っている。
 どうもフィリピンには期限通りに支払いをしなくても許されるような風潮があるようで、その額は1割近くにも達したようである。
 そのため、今回の3Qでは、複数の解約によって過去の売上が取り消された分のマイナスがある。
 今回、フィリピン国内通信事業の3Qは、QonQでみるとわずかながら減収減益となっている。
 本来契約法人数や帯域量が増えていけばいくほど売上と営利は大きくなっていくストックビジネスだが、少しでも下がるのはおかしいと疑問を抱いた人もいるかもしれない。
 これが疑問の答えである。

⑵ LRT2の火事の遅れ分
 ↑で述べたLRT2の火事の遅れ分は、フィリピン国内通信事業の売上計上部分についても遅れている。これはゆっくり待てばよい。

⑶ MRT3の売上
 ↑で述べたように、フィリピン国内通信の計上は3カ月遅れなので、MRT3の売上が来期1Q以降(4Qもほんの少しあるかも)のってくる形になる。来期以降売上が上がるのは確実であり、楽しみにしておこう。

⑷ 今は投資期
 今はミンダナオの回線敷設工事、人件費も含めて、投資を積極的に行っている最中である。
 営業利益率については、投資段階を超えれば上がってくるので、ゆっくり待とう。

 というわけで、フィリピン国内通信事業についても、ハプニングはありながらもこの数字である。4Qはさらに楽しみにしておこう。

4 国内通信事業

⑴ すごい数字 
 とにかく素晴らしい成長と伸びである。
 まだいくつかの案件について商談中のものもあるらしい。期待したい。

⑵ 通話料金の単価について
 国内通信事業において、事業者間の通話料金は業界慣習に基づき、本年度単価は3月頃に決まる。
 値下げに対応できるように引当金分の損失を1Q~3Qまでに計上しているが、もし単価が下がらなければこの引き当て分が売上に上乗せされてくる。これはどうなるか全くわからないが、こっそり期待している。
 
 というわけで、国内通信事業はとにかく素晴らしい。

5 在留フィリピン人関連事業
 

⑴ 赤字幅の縮小
 何度もこのブログでも取り上げているが、在留フィリピン人関連事業は時流に乗れていない事業である。
 日本でのフィリピン人の就職のイメージは、介護関連かもしれない。高賃金ではなく、低賃金で雇える、そんなイメージを持っている人は時代に遅れている。というか、法改正をみても、日本政府自体が時代に遅れている。
 
 今は、フィリピンの若い人は高度経済成長のもとで、高度の教育が施されている。そして、実際に英語を公用語として自在にあやつっている。というわけで、今、フィリピン人は日本ではなく、欧米に次々とわたって高収入を勝ち取っているのである。
 そんな中で、「介護職で日本へいらっしゃい!低賃金だけど!」などといっている日本の魅力があるわけでもなく、在留フィリピン人が少なくなるのは当たり前であろう。
 今いるフィリピン人妻もどんどん高齢化してきた。
 ipsの原点である事業だが、個人的には撤退を視野に入れてほしいなと思う。

 ・・・・と思っていたら、実はこの3Qでは、QonQでみると赤字幅が縮小しており、1400万の赤字であった。2Qでは2300万の赤字だったので、月単位でみると、300万ずつ赤字が少なくなっている。売上が上がったわけではないので、理由を問い合わせたところ、人件費が削減された結果とのこと。
 事業が縮小されているというのは、個人的にはポジティブなニュースであった。
 というわけで、今回は2Qよりも改善傾向にあった。

6 医療美容事業
 
⑴ 3院目は?
これもまた前期比で素晴らしい伸びである。
利益率も高い。3院目が2月にオープン予定である。
3カ月遅れの計上なので、次回の4Qにおいても今期に3院目の費用と売上は乗ってこない。

⑵ 日本の人間ドックをフィリピンに持ち込め!
さて、今医療美容事業はレーシック手術でフィリピンでナンバー1になっている。
さらに今後、日本の予防医療をフィリピンに持ち込んで、業務を拡大していく予定であることが発表された。
3院目に加えて、楽しみにしていきたい。


7 5Gの周波数割り当てってめっちゃすごいんやで!
さて、ここで、もう一度先月末に発表された5Gについて少し。


ポイントは、3.6~3.8GHzを100MHzも割り当てられたことである。
一体に何がすごいのか??
分かりやすく言うと、この3.6~3.8GHz帯を取るために、どのくらい普通はお金が必要なのかを考えると分かりやすい。




スペインでは、262億円を出して、ipsが割り当てられた周波数が落札されているのである。
262億円だしても利益の元が取れるから、通信事業者がお金を出していることは明らかであろう。

今回、ipsの努力によりフィリピン政府から割り当てられたこの3.6~3.8GHz帯。
これぞ他の企業では到底真似できない大きな競争優位性である。

日本ではドコモとKDDIという巨大企業が取った3.6~3.8GHz。
ipsの時価総額はわずか150億である。

コロナウイルスの地合いの影響もあったが、個人的にはもうちょっと割り当てられた意義を市場に評価してほしかった。
ただ、これから機関投資家への説明においても、5G周波数の割り当てと構想については順次説明していくであろうから、徐々に評価されるのではないかと楽観的に考えている。


8 最後に
 というわけで、今回のipsは、色々ハプニングが起こって売上が4Qにずれ込んだものもあったけれども、それでもこの良好な数字ということである。
 また、色々ずれたおかげで次回4Qの方が数字は期待できる。
 
 そして、つい先月は、5Gの周波数割り当てという将来の成否を分けるようなポジティブな特大材料も出た。

 今後とも、成長を追いかけていきたい。