2019年8月11日日曜日

4390 ips 1Q決算の考察

1 はじめに
さて、8月9日の終値は1143円。
ここまで、2018年度の2Q,3Q、4Qと実は決算を発表した後は急落し続けている。

というわけで、今回の1Qは、決算跨がないという人も多かったと思う。4Qの来期予想で、経常と純利が減益予想ということもあり、跨がないというのも一つの選択である。

しかし、今回の1Qの内容は、今度こそは決算後もいけるんじゃないか!?という内容だった。

(とか言ってるが、発表直後のPTSはドーンと売られて、はあ?なんで?と思ってるうちに6時半にPLDTとの調印IRと説明会資料がでて、またPTSの株価が戻っていったので、方向性は正直わからない。)

これまで追いかけていた人は安心してホールドできる内容だと思う。


さて、1Qの内容を具体的に見てみよう。
例のごとく、大谷シートを使っていく。ちょっと項目を修正した。5Gとか完全に予想外過ぎて入れられなかったので。

2 総合的な数字


今回の数字の実績である。
前期比売上が+13.7%、営業利益が+19.2%となった。
営業利益は、過去最高値である。

個人的に特筆すべきは、全体を通して営業利益が3億を超えたこと。このまま×4すれば、今期予想の12億を達成できる。
また、ここから徐々に上がっていくことが予想されるので、上振れ期待がある。

●経常利益について
円高で為替差損を8000万円計上しているが、前回より3円ほど円高となったためである。これは外貨資産に対する評価なのでやむを得ない。
ipsは、海外通信事業のIRU(破棄しえない使用権で賃借権のようなもの)などを資産としてドル建てで計上しているので、どうしても為替の影響を受ける。
次回、6月30日時点の為替107円位より円安なら為替差益、円高なら為替差損が出てくることになる。
ここは所詮は資産の評価の問題なので、あまり気にする必要はない。事業の進捗に影響を及ぼすものではないからだ。

なお、ipsは、105円で今期予想をたてている。



3 海外通信事業



前期より、株価が低迷している理由はこのセクターが原因である。

帯域量は上がるものの、高収益だった契約が値下げにより売上と利益を圧迫していった。
そのため、予想していたような売上営利とならず、少なからず投資家の期待を裏切っていた経緯がある。
この値下げによる売上・利益減がなかったら株価は多分今頃2倍以上になっていると思う。

なので、今回の数字も正直疑っていたところもある。

ところが今回、1Qで海外通信の売り上げ底打ち宣言が出た。

しかも、海外通信のセグメントの過去と比べて、過去最高の利益である。
LRT2の代理店手数料などが利益を押し上げたようであるが、本当に「底打ち」でこの調子で頑張ってほしい。

●ミンダナオ島開拓について
 
なんとあの視察旅行の翌日から、ipsの経営陣はミンダナオ島に行って頑張っていた。
本当にお疲れさまとしか言いようがないが、ここで15社との間で注文をもらったようである。

今2000キロの回線を敷設中で2019年中にはできる予定である。ちなみに、2000キロの回線敷設というと、すごく投資が必要なんじゃないか?と思われるが、工事はCATV事業者がやってくれる契約になっていて、inifiniVANが提供するのは材料のみである。
実はそこまで投資が必要なく、ある意味夢のようなプロジェクトとなっている。だからこの点で増資を心配する人は多いが、増資はない。

このミンダナオ15社の発注がのってくるのは、工事が間に合えば4Qからということになろう。5年分割での計上になる。

●ネグロス島開拓について


今回、新しくでてきたのが、このネグロス島の開拓である。
これもミンダナオと同じような方式を用いると思われる。なので費用の心配はそれほどないと思う。今のところ2社ということで、今後のさらなる開拓が期待される。

4 フィリピン国内通信事業について

前期比で見ても、QonQでみても、売上が素晴らしい伸びである。
利益は黒字転換したところであるが、まだ投資期なので、利益についてはあまり気にせず焦らずゆっくり待とう。

ガンガン工事して、ガンガン契約を取ってきてほしい。

視察旅行では営業人員も2倍以上にする予定とのことであった。


5 国内通信事業について


今回、この国内通信事業の営業利益も非常に良い。
秒課金サービスやAmeyoJの売り上げが良かったとのことである。

IRに問い合わせても、国内通信事業はまだ先が見込めるような感じがうかがえた。

新しく始まったクラウドのサービスについては、月10万円程度新規が積みあがってきているようで、こちらの寄与はしばらく後になりそうである。

6 在留フィリピン事業について
足を引っ張っている。
今期はもともと売上4億との予想であったので、1Qあたり1億の売上が必要である。
ところが売上5600万、赤字も1600万であった。

今は、日本にいるフィリピン人の数自体が減ってきているので、マーケットの問題もあると思う。
体制の再構築をうたっていて今回この数字だったので、今後どんなチャンスがあるかわからないが、このままなら規模縮小か、撤退して資源をフィリピンに集中させた方がよいとも考えている。


7 医療美容事業について



相変わらず好調である。
レーシックの手術数はうなぎのぼりに増えて、白内障も増えているようである。

先日発表された3番目の病院ができれば、もっと売上と利益も増えることが予想される。持分50%なのが口惜しい。
ボニファシオグローバルシティにできる第3院は、来年1月から本格営業は開始する予定である。

8 PLDTとの調印について
決算日の18時半に、もう一つIRが出た。
PLDTのツイッターには、当日の11時にはすでに発表されていたようである。↓




 PLDTといえば、ipsはどちらかというとこれまで距離を取っていて、というより大手2社を競合(でフィリピン通信環境にとって諸悪の根源のように)と言ってきたはずなのに、今回調印してこれから一緒に手を結ぼうということになった。

 PLDTは時価総額5000億円以上であり、ドコモも出資している会社である。
 
 MRT3とLRT2の使用権を転貸することになるが、これについては有償で提供するとのことであり、売上に計上されることになる。

 ただ・・・本当にそれだけで調印式までするものなのか?5Gも含め、このあたりは謎であるが、何かほかの絡みが今後できたらよいと思う。

9 社員へのインセンティブについて
 今回、「第三者割当による新株予約権の発行及び時価発行新株予約権信託の導入」が発表された。
 なんのこっちゃ?と思われる人もいるかもしれないが、要するに、従業員へのストックオプションのようなものである。
 ただし、信託形式を採用しているので、会社が後で従業員に対して貢献度に応じて新株予約権を分配できる仕組みになっている。
 ここで特筆すべきは、来期2020年3月から、4年後の2023年3月期までの間に営業利益17億、25億を達成しなければ行使できないということである。
 これらを達成するころには株価も今の2倍以上にはなっているであろうから、あるいみ中期計画みたいなものと捉えることができる。
 ipsは、社員で株を持っている人があまりいないということだったので、今回のインセンティブでまた情熱を燃やしてほしいと思う。

10 終わりに
 さて、今回の1Qの内容は、私の予想を上回っている数字であり、安心できる内容であった。
 引き続き、追いかけていきたい。